戸部はモニミア科とゴモルテガ科の雌雄生殖器官の発生から種子の完成までに至るまでの、いわゆるEmbryologyの生殖構造の研究をおこない、高橋はクスノキ科の無外膜花粉の形態形質を研究し、更に花粉化石の追跡により単子葉植物の起源さ探るために、福島県の岩木市双葉層群の花粉化石学的研究を行った。 生殖構造の研究については、モニミア科5亜科のうち研究が残っている4亜科(すなわち、ホルトニア亜科、ア-セロスペルマ亜科、シパルナ亜科、モリネディア亜科)が調査された。その結果、モニミア科は外珠皮が内珠皮よりも短い、胚珠や種子はパキカラザルでないことなどが、はっきりした。その他に、これまで僅かに報告されていたデータのうち、例えばア-セロスペルマ亜科で報告されていたアメ-ボイド状のタペ-トは、実は腺状であることなども明らかにされた。ゴモルテガ科もまた、胚珠や種子はパキカラザルでないことでは、モニミア科と一致するが、外珠皮と内珠皮の長さは同じであることが初めて明らかになった。 一方、クスノキ科植物の花粉は、無外膜の全口型花粉に類型化されるが、極めて薄いスポロポレニンの膜を有し、その表面に微小突起が均一に分布していることがわかった。その内側には、厚い内壁が発達しており、管状構造が放射状に入り込んでいる特徴がある。また福島県の岩木市双葉層群の花粉化石学的研究から、後期白亜期において、ユリ科植物などの単子葉植物がすでに分化していることを示す化石花粉資料が得られており、被子植物の初期進化の段階で単子葉植物の分化がすでに始まっていたと推定された。
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