農薬は一般に微生物によって好気分解されにくいといわれている。しかし、わが国の水道水源は表流水の場合ほとんど例外なく農薬に微量ではあるが汚染されている。現在の浄水法では除去できない。そこで困難を前提に好気生物分解の研究をスタートした。予備実験的にビーカーラストレベルで検討の結果、予想以上に容易に分解され、生成物の確認さらに分解菌の単離にも成功した。ただ、農薬の場合、分解されても生成物の毒性が分解される前より低減されなければ効果があったとは言えない。そこで、研究を大別して、分解研究と毒性評価の研究に二分して進めた。まず、後者の毒性評価についてはCHL(チャイニーズハムスター肺細胞の染色体異常テスト法を開発であったので、その成果を継続した。顕微鏡写真をテレビカメラで入力し画像処理装置(ル-ゼック社製)で自動処理の上、検出する方法である。 分解研究ではその後長期にわたり分解能力が極めて小さくなり、結局水中のpHに大きく依存し、アルカリ側の狭い限られた範囲で分解されることをつきとめた。先の予備実験では偶然この狭い範囲で実験したものであった。ひきつづき、生成物の分離、分解菌の単離にも成功したが、物質名、菌名の同定など引き続き実施している。生成物の毒性についてはあまり成果が上らず、今後に課題を残した。
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