研究課題/領域番号 |
06454036
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
塩谷 捨明 大阪大学, 工学部, 教授 (50026259)
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研究分担者 |
大政 健史 大阪大学, 工学部, 助手 (00252586)
清水 浩 大阪大学, 工学部, 助手 (00226250)
菅 健一 大阪大学, 工学部, 教授 (20029250)
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キーワード | 乳酸菌 / 酵母 / プロピオン酸菌 / ウィスキー醸造 / マルトオリゴ糖 / 抗菌物質ナイシン / フローサイトメータ |
研究概要 |
発酵・醸造食飲料品の製造過程では、二種以上の微生物が共存する混合培養系になっている場合が多い。これら複数の微生物の共存関係が製品の微妙な呈味に関係しているともいわれている。また、乳酸菌やプロピオン酸菌は発酵過程で抗菌物質を生産し、これが食飲料品の自然な保存剤として利用できる場合もある。本研究では、(1)ウイスキー醪中の酵母と乳酸菌の役割の解明、(2)乳酸菌とプロピオン酸菌の混合培養系の解析とその制御(3)保存剤としての利用可能な乳酸菌の生産する抗菌ペプチドの生産など幾つかの発酵食飲料品製造過程に見られる複数の微生物間の係わりの解明や保存剤生産への応用を目的とした。 ウイスキー醸造過程においては酵母Saccharomyces cerevisiaeによるアルコール発酵後、乳酸菌Lactobacillus acidophilusが死滅した酵母を栄養減として増殖を始めるとともに酵母の資化できないオリゴ糖を資化し呈味に影響を与えることがウイスキー醸造会社により報告されたため、実験室レベルの発酵槽でも解析を行った。本実験で用いたL.acidophilus ATCC4356は増殖が非常に緩慢な菌であり、増殖のために要求する最小栄養源も不明であった。本菌はグルコースとペプトンを含む培地に酵母破砕液を添加すると非常に増殖状態が改善された。このことからウイスキー醸造過程においてエタノール発酵後に死滅した酵母菌体内に含まれる物質がこの乳酸菌の増殖を促進することが示唆された。さらに、この物質はビタミンやアミノ酸ではなく酵母エキスに含まれる分子量10,000以下の物質であることが確認された。しかし、本菌はオリゴ糖資化能の試験により酵母の資化できない数種のマルトオリゴ糖をいずれも資化できないため、ウイスキー醸造のモデル系にはなり得ず、食品発酵における乳酸菌の役割は菌株に非常に依存していることが改めて認識された。一方、発酵槽中のそれぞれの菌数を別々にしかも迅速にカウントすることは重要であるが、フローサイトメータを利用することにより計測することができた。 乳酸菌Lactoccocus lactis IFO 7962の生産するナイシンは食中毒菌に抗菌作用を示すことから食品保存剤として注目されている。しかし、同時に生産される乳酸によりその生産活性が低下するため、培養中にその乳酸を取り除くことが望ましい。一方、プロピオン酸菌Propionibacterium freudenreichii IFO 12424は乳酸を資化し、プロピオン酸を生産する。従って、これらの菌を効率的に混合培養することによりナイシン及びプロピオン酸を効率的に生産することが本研究サブテーマ(2)、(3)の目的である。現在、純粋培養によりそれぞれの菌株の培養特性を詳細に検討中である。
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