研究概要 |
(1)クロレラ自己スプライシング影響因子(in vitro)の検出: Chlorella ellipsoidea IAM C-87株の核rRNA遺伝子に見いだされた二つのグループI自己スプライシングイントロンCeSとCeLをin vivoで制御する因子の検証を行った。両イントロンを大腸菌に導入し、βガラクトシダーゼ活性発現を指標として、そのスプライシングを調べた結果、CeSの高活性とは対比的にCeLはスプライシングを示さなかった。つまり、CeLにはtransに働く特異的因子が必要であり、大腸菌にはこれが欠落していることがわかった。RNA酵素-RNA・タンパク質酵素-タンパク質酵素への酵素進化の道を分子レベルで究明する上で、クロレライントロン系は貴重な情報を提供すると思える。 (2)クロレラウイルスイントロンの進化と水平伝播: 前年度までに見いだした二種のイントロン(CvU1,CvB11)に加えて、他に六種のウイルスイントロンを検出し、うち一つ(CvH1)の全構造を決定した。CvH1はCvU1とは異なり、CvB11と99%以上の相同性を示し、ここに二系列のウイルスイントロンが示唆された。さらに、ウイルスイントロンの移動を以下の二つの方法で調べた。(i)40-60世代後のCVU1プラークをランダムに抽出し、イントロン-イクソン構造を解析した。(ii)含イントロンウイルス(CVU1)と無イントロンウイルス(CVK1)を混合感染させ、出現プラークにおけるイントロンの移動を調べた。この結果、ウイルス間でのイントロンの移動が実験的に確認できた。これより、ウイルスを仲介因子としてのグループIイントロンの生物界間(interkingdom)水平移動の考え方に実験的証拠が得られた。以上、平成7年度の成果の一部は、一報の論文、二報の総説に発表した。特に、本研究からの「ウイルス仲介イントロン移動説」は「化学と生物」12月号(1995)に提唱した。
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