マンガンノジュールのバイオ処理システムの構築をめざして、有価金属の微生物的浸出、微生物が作り出すH_2Sによる有価金属の沈殿・回収、余剰H_2Sの微生物的処理について研究を行い、次の諸点を明らかにした。 1.有価金属の浸出 好酸・好熱性細菌A.brierleyiや好酸・中温菌T.thiooxidans、T.ferrooxidansは液体培地に添加した元素硫黄を酸化して亜硫酸、硫酸を生成し、その化学作用によりノジュールから有価金属を浸出させることができた。これら細菌のうちで最大の浸出能を示した好熱性細菌に着目し、有価金属の浸出率に及ぼす各種操作因子(pH、初期菌体濃度、硫黄やノジュールの添加量)の影響を明らかにした。 2.有価金属の沈殿用H_2Sの生成 浸出液中のSO_4^<2->をエネルギー源とするD.desulfuricansの回分培養を窒素通気条件下で行い、SO_4^<2->の還元によるH_2Sの微生物的生成に関する量論や速度論を明らかにした。反応吸収理論に基づく解析から、H_2Sの放散速度に及ぼす液境膜内反応の影響は無視できることがわかった。放散速度の実測値は、液本体でのH_2Sの生成、H_2の解離平衡、反応器の物質移動特性に基づく理論値と良好に一致した。 3.余剰H_2Sの酸化処理 T.thiooxidansによるH_2Sの液相酸化実験を連続式反応器で行い、希釈率を変化させて比増殖速度、菌体収率を測定した。比増殖速度の基質濃度依存性から本系に対してモノ-の速度式が適用できることが明らかになり、実験データの速度解析から最大比増殖速度と飽和定数を求めた。 4.微生物的処理システム 上述の各単位微生物反応操作の処理速度を定量的に把握した結果、ノジュールの浸出が律速段階になることが判明した。本バイオシステムの採用によって、銅や亜鉛は3日以内でほぼ100%、またコバルトやニッケルはを10日の処理で80%前後を硫化物として回収できた。
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