テンサイにおける細胞質雄性不稔性の機構解明と育種的利用

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06454039
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 三上 哲夫 北海道大学, 農学部, 教授 (50133715)
• 研究分担者: 犬飼 剛 北海道大学, 農学部, 助手 (90223239)
• キーワード: テンサイ / 細胞質雄性不稔性 / ミトコンドリア / 構造変異 / rps13 / rps3 / orf171 / orfB

研究概要

テンサイの細胞質雄性不稔性の機構解明を目的として一連の実験を行った。
テンサイS型雄性不稔ミトコンドリアにおいてはcoxI,coxII,atpA及びatp6の転写産物のサイズが正常型とは異なる事が判明している。今年度はこれら以外に転写産物の違いが検出された2領域について解析した。S型、正常型両株のミトコンドリアゲノムライブラリーより、目的とする領域を含むクローンを選び出し塩基配列を決めた。遺伝子を検索した結果、2箇所の構造変異域にはそれぞれrps13遺伝子(リボソームタンパク質S13)とrps3遺伝子(リボソームタンパク質S3)の相同配列が含まれる事が明らかとなった。
rps13領域:正常株クローン中に見つかったrps13はニンジンrps13と93%のホモロジー(塩基配列)を示す。S型雄性不稔株由来のクローンにもrps13コード域が含まれているが、ATG開始コドンの上流56bpからN型rps13座とのホモロジーが失われる。注目されるのはS型rps13の5'上流-524bpにorfB(普遍的なミトコンドリア遺伝子)コード域の一部(5'域)と相同性の高い配列が存在し、これをアミノ末端にもつorf171が見出された事である。orf171はS型株固有配列で、ミトコンドリア中で転写されている。orf171とテンサイ雄性不稔性の発現との関連を明らかにする事が次の研究課題である。rps3領域:別の構造変異域にrps3遺伝子を見出した。正常株とS型雄性不稔株との間ではrps3の3'端が著しく相違しており、転写産物のサイズも互いに異なっている。

研究成果

• [文献書誌] Kubo,T.: "The chloroplast trnP-trnW-petG gene cluster in the mitochondrial genoms of Beta vulgaris,B.trigyna and B.webbiana.evolutionary aspects." Current Genetics. 27. 285-289 (1995)
• [文献書誌] Senda,M.: "Mitochondrial gene variation and phylogenetic relationship in the genus Beta." Theoretical and Applied Genetics. (in press).
• [文献書誌] Kato,S.: "Nucleotide sequence and transcription of the gene coding for ATPase subunit 9 in apple plant(Malus x domestica Borkh)." Acta Horticulturae. (in press).
• [文献書誌] Kato,S.: "The apple mitochondrial atpy gene:RNA editing and co-transcription with exons a and b of the nad5 gene." Physiologia Plantarum. (in press).
• [文献書誌] Kishima,Y.: "Chloroplast genomes in buckwheat and its related species;construction of the physical map and phylogenetic relationships." Plant Science. (in press).
• [文献書誌] Kishima,Y.: "Physical mapping of differences between the chloroplast DNAs of Beta vulgaris and B.webbiana." Plant Breeding. (in press).