近年、分子生物学.分子遺伝学.遺伝子工学などの急速な親展を背景に、植物遺伝学や育種学の分野において、これらの新技術を取り入れる動きが盛んで、すでに、トウモロコシ、ナタネ、トマトなどにおいては遺伝子導入による新品種も育成され、実用品種として食卓にも上りつつある。 本研究では、細胞壁のある細胞や小さな組織に対してレーザー光を顕微鏡の対物レンズを通して照射し、外液中のDNAを取り込ませることにより形質転換を効率的に行うための方法を確立することを目的として行った。 レーザーによる穿孔処理に先立って、イネ・ペチュニアなどの植物を用いて、レーザー法により適した培養法の確立を行った。ペチュニア品種バイオレットは茎・胚軸・子葉からの再分化が容易な品種であり、この品種を用いて組織切片観察を行った。その結果、いずれの組織においても7日目頃には表皮細胞からの直接固体再分化の様相が認められ、特に胚軸では切り取った上部が最初に肥大し、この部分から再分化することが認められた。また、より再分化が容易であると思われる生長点培養も行った。さらに、水稲品種日本晴を用いて生長点培養することにより多芽体の形成が認められ、この場合には、葉原基の背側より多くの不定芽が形成されていた。そのため、生長点のこのような部位をレーザー処理することにより、効率的な形質転換体の作出が可能であると思われた。このような部位へのレーザー処理を行ったが、ペチュニアの子葉・胚軸へのレーザー処理では形質転換体が得られたが、生長点やイネでは成功していない。今後さらに改良を重ね、組織培養が困難な植物種でも簡易に形質転換体を作出するための方策を考える必要があろう。
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