研究概要 |
実験植物の栽培条件は昨年度と同様に行った。すなわち、CO_2濃度の制御を行ったグロース・チャンバーを用いて、昼間と夜間の温度を各々28,23℃、CO_2濃度を350ppm(標準区)と700ppm(高CO_2区)として、水稲(品種;日本晴または短銀坊主)を土耕または水耕栽培とした。その結果、1.高CO_2区では昨年同様に、栄養生長期における乾物生産の著しい増大が見られた。この増大には、分げつの促進に基づく葉面積の拡大が貢献していることが知られたが、個々の葉については、長さの増加(縦方向の伸長)によるもので、幅の増加は小さかった。また、重要な無機元素としてリン(濃度;0.6〜600μM)を組み合わせた場合、生育は60μMでほぼ飽和し、生育各形質にCO_2とリンの交互作用は認められなかった。しかし、乾物生産におけるリン利用効率は高CO_2下で常に高く、また、リン濃度が低下するにつれて指数関数的に上昇した。2.栄養生長期に最上位完全展開葉の光合成活性を比較したところ、純光合成速度は高CO_2区の植物でより大きく、これにクロロフィル含量の増大も伴っていた。3.播種から収穫期まで土耕栽培した植物の子実収量は、高COX_2濃度により増大した。その内容は、穂数が増加し、また、大型の穂の割合が高まることに基づいていた。しかし、リンとの交互作用は認められなかった。 以上、昨年度の結果と併せて考えると、将来に見込まれる大気中CO_2濃度の上昇は、水稲の収量を向上させることは確実視されるが、無機養分供給が伴わない場、その効果は減殺されることが示唆された。なお、本年度は研究成果の一部を第2回国際作物学会議において発表し、各国の研究者と本課題に対する意見交換ができた。
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