カキ果実の脱渋機構を再検討するためには、タンニン細胞の機能を明確にし、細胞レベルでのタンニン不溶化機構を解明することが不可欠であると考え、まず個々のタンニン細胞内でのタンニンの不溶化機構を解明するための実験系の確立を目的として本実験を行った。 1.タンニン細胞の機能性を調査する手段として、果肉の切片をマイクロスライサ-により作成し、その切片肉のタンニン細胞および柔細胞の細胞液をマイクロマニピュレータにより直接採取する方法を検討した。その結果、マイクロマニピュレータに装備したマイクロピペットを細胞にインジェクトし、マイクロシリンジによってそれに負圧をかけることによって、インジェクトした細胞からその内容物を吸引することができた。この方法によって、成熟前のカキ果実中のタンニン細胞から5〜7nl、柔細胞から約2nlの液胞液を集めることができた。 2.上記の方法により、成熟前の果実から採取した個々のタンニン細胞と柔細胞の液胞液中でのタンニン含量および糖組成を分析したところ、タンニン細胞には10〜12%のタンニンと10〜13%の糖が含まれていた。柔細胞にはタンニンはほとんど認められなかったが、約20%の糖が含まれていた。また、柔細胞ではかなり高い割合でショ糖を含んでいるのに対して、タンニン細胞では糖組成に占めるショ糖の割合が少なく、グルコースが高い割合を占め、タンニン細胞の機能性を考える上で興味深い結果であった。
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