研究概要 |
1.バングラデシュ産二倍性野生系統の花粉母細胞の減数分裂・花粉稔性調査及び自殖実生の作出 供試した9系統の花粉母細胞の染色体の対合型は14IIと13II+2Iのみで,巨大花粉は認められず,酢酸カ-ミン染色花粉率も67%以上であった.これらの結果から,二倍体間の交雑による三倍体の出現に非減数性雄性配偶子が関与している可能性は低いものと推測された.また,自殖した23系統のうち,21系統で自殖種子が得られ,調査した12系統の種子発芽率は33〜90%であった. 2.組織培養及び凍結による保存法の開発 (1)バングラデシュ産野生系統の茎頂をMS寒天培地1mlを入れたプラスチック製試験管に1個づつ植え付け、プラスチック容器内に密封し,25℃,15℃,5℃及び変温(25℃,15℃に各10日間,その後5℃)の4温度条件と12時間日長照明及び連続暗黒の2光条件とを組合わせて1年間培養した.その結果,生存率は25℃・照明区が最も高く,84.6%で,次いで,15℃・照明区が62.5%であった. (2)‘筍芋'の茎頂由来のカルスを継代培養開始3日後に,ABA10mg/lとプロリン100mMを添加した培地で2日間培養して耐凍性を付与し,塩化カルシウムを50mM添加した凍害防御液及び洗浄液で処理することにより,カルス細胞をほぼ100%生存させることが可能となった.しかし,側芽の凍結保存法を確立するには至らなかった. 3.アイソザイム分析 野生系統及び栽培品種・系統(日本産:40品種,バングラデシュ産:107系統,タイ産:20品種・系統,中国産:11品種,韓国産:1品種,インド産:1系統,計180)についてグルタミン産オキザロ酢酸アミノ基転移酵素(AAT)のアイソザイム分析を行った結果,日本産の三倍体品種のみに認められた遺伝子座Aat-3の対立遺伝子aは、外国産野生系統では認められず,栽培品種・系統で認められた.この結果から,対立遺伝子aは三倍体サトイモの栽培品種・系統の何らかの実用形質と関連があることが推察された.
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