研究概要 |
本研究では,サトイモの交雑育種のための基礎的資料を得ることを目的として実験を行い,以下に示す成果を得た. まず,バングラデシュ産の二倍体野生サトイモを用いて,花粉母細胞の減数分裂と花粉稔性を調査した結果,これらの減数分裂が比較的正常であることならびに花粉稔性が比較的高いことが明らかとなった.次に,開花および結実の様相の調査と人工交配を行った.その結果,供試した野生サトイモは,よく開花・結実し,得られた種子は発芽して実生を生じることが明らかとなった.以上の結果から,供試した野生サトイモが高い種子繁殖能力をもつことがわかった.また,この実験において多くの自殖および交雑実生を得ることができた.次に,得られた実生を用いて染色体数の調査を行った.自殖および交雑のいずれの実生においても,三倍体の出現を低頻度ながら確認し,サトイモの三倍体が二倍体の自殖および交雑によって出現したことが実証できた.さらに交雑によって得られた三倍体の実生についてアイソザイム分析を行った結果,これらの三倍体の出現が非還元性の雌性配偶子と還元性の雄性配偶子の接合による場合と非還元性の雄性配偶子と還元性の雌性配偶子の接合による場合とがあることが明らかとなった.次に,日本産および外国産のサトイモ品種・系統についてアイソザイム分析を行った結果,わが国の子芋用品種(三倍体)の成立について若干の知見を得た.最後に,サトイモ品種・系統の組織培養による保存法および凍結保存法の検討を行った結果,茎頂培養による長期保存が可能であることならびに凍結保存法としては簡易凍結法が有効であることが示された.
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