ネギ属野生種Allium galanthum、A.oschaninii 及び A.vavilovii(2n=16、ゲノムGG、00及びVV)が染色体提供親であるネギ(2n=16、FF)の単一異種染色体添加系統を作出するために、ネギと野生種の三倍性雑種(2n=24、FFG、FFO、FFV)とネギとの正逆交雑を行った後、胚珠培養を行い、多数の実生を得たので、これらの核型及び染色体対合型を分析した結果、1個体は A.galanthumの第6染色体(6G)が添加された(2n=17、FF+6G)、3個体は、A.galanthumの未同定の染色体(nG)が添加された(2n=17、FF+nG)、さらに、1個体は A.vaviloviiの第4染色体(4V)が添加されたネギの単一異種染色体添加系統(2n=17、FF+4V)であることが明らかになった。 異種染色体に座乗するアイソザイム遺伝子を分析するための基礎的研究として、ネギ、野生種及び両者の雑種を用いて11種類の酵素のアイソザイム分析を行い、13種類のアイソザイム遺伝子座(Got-1、Got-2、Pgi-1、Pgm-1、Lap-1、Mdh-1、Idh-1、Gdh-1、Gdh-2、6-Pgdh-1、Skdh-1、Adh-1、Aco-1)についてそれぞれの野生種が持つ対立遺伝子を明らかにした。さらに、ネギ及び野生種の葉から抽出した DNAを60種類のランダムプライマーを用いた PCR法により増幅した DNA断片の多型(RAPD)を調査し、ネギと野生種間の遺伝的マーカーとして利用できる非共有断片(RAPDマーカー)を検索した結果、三つの野生種についてそれぞれ 278、363、365のRAPDマーカーを確立した。 本研究で作出された5系統の単一異種染色体添加系統を用いてアイソザイム分析を行った結果、1系統(FF+nG)がPgm-1について、1系統(FF+6G)が Got-2及び Adh-1について、A.galanthumに固有な対立遺伝子によって発現されるアイソザイムバンド(アイソザイムマーカー)を持っていた。また、1系統(FF+4V)が Mdh-1について A.vaviloviiのアイソザイムマーカーを持っていた。さらに、RAPD分析を行った結果、すべての系統で染色体提供親に固有なRAPDマーカーが検出された。したがって、これらの遺伝子及び遺伝的マーカーが座乗する染色体が明らかになった。
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