アリモドキゾウムシ(Cylas formicarius FABRICIUS)の不妊化方法を確立するため、蛹期にガンマ線を照射した成虫について配偶子形成と胚子発生に及ぼす放射線の影響を組織学的に検討した。ガンマ線照射により雄では精子形成過程が攪乱されて、精原・精母細胞は崩壊・退化し、貯精嚢中の精子数が激減した。照射雄と交尾した正常雄の受精嚢内には精子は僅かしか認められなかった。また、照射雄と交尾した正常雌の産下卵では正常な胚子発生過程が阻害されて、卵表層に分裂核が集積した後、胚盤の崩壊、卵質の空胞化を起こし卵は壊死した。このことから、雄ではガンマ線照射により優性致死変異を示す少数の以上精子でが形成されることが示された。一方、雌ではガンマ線照射により卵形成が完全に阻害された。卵母細胞は発育せず、栄養細胞の核濃縮や核崩壊がみられ、産卵が阻止された。ガンマ線照射に対する生殖細胞の感受性は、雌の方が雄に比べてかなり高いことが示唆された。 ウリミバエ(Dacus cucurbitae Coquillett)のガンマー線照射による不妊化の機構を解明するため、卵子形成に及ぼすガンマー線の影響について、組織学的に観察した。照射虫の卵巣では卵胞の発育が停止し、25日令でも大きさは変わらず、完成卵は全く形成されなかった。また、照射虫の卵巣小管では栄養細胞の内部が崩壊流出し、濾胞上皮細胞層の内壁に付着し、卵胞の各細胞核は核濃縮を起こし濃紫色に染色されていた。中腸の組織学的観察の結果、0日令では正常虫及び照射虫の間に差はみられなかった。4日令以降は照射虫の円筒細胞は短く、盃状細胞の腸内開口部は広がり、腸内には内容物が繊維状に凝縮していた。また、照射虫では正常虫と比較して蛹脂肪体の崩壊と成虫脂肪体の発達の遅れがみられた。これらの結果から、ガンマー線照射によりウリミバエ雌の卵形成が阻害され、正常雄と交尾した照射雌は完全卵を持たないため、子孫は生じないことが不妊化の実態として明らかとなった。また、ガンマー線照射によって中腸組織に障害が生じ、栄養供給の低下することが成虫の寿命低下の一因であると推察された。
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