ガンマ線照射によるウリミバエ雌の不妊化の生理機構を解明するため、卵形成と中腸及び脂肪体に対する照射の影響を光顕と電顕で病理組織学的に検討した。また、ビデロジェニン(Vg)合成に対する照射の影響についても生化学的に検討した。正常雌では羽化後直ちに第1卵胞が交互栄養室型卵管の生殖巣より分化し、栄養細胞と濾胞上皮細胞が卵母細胞の発達に密接に関連した機能を示し、羽化後8日以降に成熟卵が形成された。70Gyのガンマ線照射により卵原細胞は核濃縮や核融解し、崩壊、凝縮し卵管は空隙化し、雌の不妊化を引き起こした。日令の経過に伴い照射虫の中腸上皮は薄層化し、中腸後端部内には管状の大腸菌類似の微生物が群生したのに対し、正常虫の中腸内には少数の微生物しか存在せず、それらは円筒細胞からの分泌物により包囲され消化された。また、照射虫では正常虫に比べ蛹脂肪体の崩壊と成虫脂肪体の発達が遅延した。しかし、血液タンパクの電気泳動分析では、照射虫の成虫脂肪体でのVg合成は阻害されていなかった。これらの結果から、ガンマ線照射によるウリミバエ雌の不妊化の生理機構と成虫の寿命低下の原因を考察した。 アリモドキゾウムシの不妊化の生理機構を解明するため、生殖細胞および体細胞に及ぼすガンマ線照射の影響を組織学的に検討した。蛹5日齢にガンマ線を照射した雄成虫では精子形成過程が攪乱されて、精原・精母細胞の崩壊・退化し、貯精嚢中の精子の著しい減少と、残存する精子の形態の異常化が観察された。一方、雌成虫では卵巣発育が抑制されて卵原細胞および卵細胞の顕著な核濃縮と退化がみられた。放射線量の増加に伴い生殖細胞への影響は顕著となり、40Gyで雌は完全に不妊化されたのに対して、雄では精子形成の著しい攪乱が観察された。また、照射個体では消化管における消化・排泄の機能障害を示唆する組織像が観察され、このことが照射個体における寿命低下の一因となっていることが推測された。以上の結果から、アリモドキゾウムシの不妊化のための最適な照射線量と照射時期について考察を加えた。
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