植物の病原菌に対する防御反応応答と遺伝子発現制御に関する研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06454063
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 山田 哲治 岡山大学, 農学部, 教授 (00191320)
• 研究分担者: 一瀬 勇規 岡山大学, 農学部, 助教授 (50213004)
• キーワード: フェニールアラニンアンモニア・リアーゼ / PAL / カルコン合成酵素 / CHS / エリシター / サプレッサー / エンドウ褐紋病菌 / シス・トランス作動因子

研究概要

植物と微生物の相互作用における初期認識には、植物に一連の防御反応を誘導する物質であるエリシターとその誘導を抑えたり遅らせたりする物質であるサプレッサーなどの、菌由来シグナル因子が、病原性・非病原性を決定する要因として非常に重要な役割を担っている。
本研究では、病原菌由来シグナル因子による植物防御遺伝子の同調した発現調節に必要なシス・トランス因子の割り出しをさらに押し進めるため、遺伝子改変したPAL,CHS遺伝子のプロモータを導入したトランスジェニック植物体を作出し、病原菌や非病原菌を接種した場合の、感染局部におけるGUS遺伝子発現を検索することにより、in situでの病原菌と宿主植物のinteractionにおける植物防御反応遺伝子の発現様式を観察するとともに、エリシターあるいはサプレッサーに対する植物の遺伝子発現制御応答に必要なプロモータ領域を明らかにすることを目的としている。本年度の研究では、以下に列記した実験結果を得た。
1.Loss of function実験からPSPAL1,PSPAL2各遺伝子5'-プロモータ領域に含まれるエリシターあるいはUV照射による発現誘導応答に必要なシス因子の候補としてbox1(L-box),box2(P-box),box4(AT-box)があげられた。このことはゲル・モビリティー・シフトアッセイやDNaseI-,OP-Cu footprinting analysisによっても確かめられた。
2.トランスジェニックタバコにおけるキメラ遺伝子の発現様式からPSPAL1,PSPAL2プロモータはともに、根・下位茎における組織特異的発現に関与していることが示唆された。また、PSPAL1プロモータは、さらに花弁の色素沈着部における特異的発現に関与していることが明らかとなった。
PSPAL1,2、およびPSCHS1,2のすべてのプロモータ領域のATリッチシークエンスに結合する共通のタンパク質はHMG-I/Yに類似するDNAベンデイングに関与するタンパク質である可能性が大きい。

研究成果

• [文献書誌] T.Shiraishi,et al.: "Suppressors:Determinants of specificity produced by plant pathogens." Plant Cell Phisiol.35. 1107-1119 (1994)
• [文献書誌] H.Kato,et al.: "Characterization of nuclear factors for elicitor-mediated activation of the promoter of the pea phenylalanine ammonia-lyase gene 1." Plant Physiol.(in press). (1995)
• [文献書誌] T.Hiramoto,et al.: "Signal molecules inducing systemic resistance and susceptibility in barley seedling." J.Phytopath.143(in press). (1995)
• [文献書誌] T.Hiramoto,et al.: "The relationship between systemic resistance induced by pruning and accumulation of antifungal substances in barley seedling." J.Phytopath.143(in press). (1995)
• [文献書誌] K.Nasu,et al.: "Suppression of the activation of chitinase and β-1,3-glucanase in pea epicotyls by endogenous suppressor from Pisum sativum." Ann.Phytopath.Soc.Japan. (in press). (1995)
• [文献書誌] M.Wada,et al.: "Supprescin from a phytopathogenic fungus deactivates transcription of a plant defense gene encoding phenylalanine ammonia-lyase." J.Mol.Biol.(in press). (1995)
• [文献書誌] 白石友紀: "病原菌シグナルと植物の防御応答" 日本農芸化学会誌. 69(印刷中). (1995)
• [文献書誌] T.Yamada,et al.: "Functional analysis of the promoters of phenylalanine ammonia-lyase genes in pea." Plant Cell Physiol.35. 917-926 (1994)
• [文献書誌] T.Shiraishi,et al.: "Phenylalanine ammonia-lyase in barley:Activity enhancement in response to Erysiphe graminis and Erysiphe pisi." Physiol.Mol.Plant Pathol.(in press). (1995)
• [文献書誌] 山田哲治: "植物病理学事典,「がん腫病」の項" 養賢堂(印刷中), (5) (1995)