研究概要 |
植物病原細菌の同定は、病害防除対策において不可欠の作業である。しかし、現行の同定法は、50〜60項目にも上る検査項目について2〜3ケ月にわたり検査を行なわねばならず、さらに検査結果の判定には可成の経験を必要とする。したがって、病害発生時に迅速な対応が出来ずにいるのが現状である。このため、簡便・迅速で、より客観性に富む同定法の開発が長年切望されてきた。我々は、松山らによりリン脂質簡易同定法として開発された「直接コロニーTLC法」を用いて、重要植物病原細菌の簡易同定を試みた。本法は、一白金耳量の病原細菌コロニーをシリカゲルTLCプレートの原点に直接塗布後、完全に乾燥し、クロロフォルム-メタノール(2:1, v/v)で短時間展開し、乾燥後、菌体を除去し、クロロフォルム-メタノール-水(60:25:4, v/v/v)で同一方向に再度展開する。乾燥後、ニンヒドリンを噴霧し加熱してアミノ脂質を検出する。この方法により、属レベルの識別は勿論のこと、Erwinia属菌、Pseudomonas属菌では種レベルでの識別が可能であることが明らかになった 特にPseudomonas属菌の中のCepacia-type(Burkholderia sp. gen. nov. )に属する菌株は、TLCクロマトグラムに関して特徴的であり、近縁とされるP. gladioli, P. glumaeやP. plantariiのクロマトグラムも微細な部分で異なっており、本法により識別が可能であることが示された。今後、HPLCやGLCの結果を併用することにより、当初の目的であった簡便・迅速・客観性に富む迅速同定法を完成させることが可能であると考えられる。
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