精子や精細胞の細胞内DNAは体細胞に含まれるDNA量の半分であるので、その存在は、細胞計測により容易に判定出来るものと考えられるが、家蚕においては、そのような観点からの追究は全く行われていない。そこで本年度は、精細胞の形成開始を支配する内分泌学的要因を解明するために、昆虫変態に関わるホルモン処理を3眠蚕に行い、細胞計測により精細胞の形成開始時期を調査した。 供試品種として、遺伝的な3眠蚕(劣性3眠蚕)のrtを用い、イミダゾール化合物KK-42および幼若ホルモンJHの処理を行った後、これらのカイコを毎日解剖して、精巣を摘出した。中垣ら(1980)の方法に従って、摘出した精巣細胞の浮遊液を作成し、細胞中のDNAをpropidiumiodideで染色した。その蛍光強度をセルソーターで測定し、精細胞の存在の有無及び蓄積量を調査した。 対照区での精子形成は通常4齢3日目に始まるが、JH処理によって精子形成の開始時期が、3日程遅れ、4齢6日目から始まり、KK-42処理では3日程早まり、4齢起蚕時に始まるること明らかとなった。 KK-42は、抗JHの作用があると云われているので、JHが精子形成に対し抑制的に働くことを示唆しているものと考えられた。
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