これまでカイコの精子二型の産生に関しては、幼虫期に減数分裂を終了したものが有核精子となり、蛹期に減数分裂を終了したものが無核精子となるという漠然とした捉え方しかされていない。そこで本年度は、4眠蚕の幼虫3〜4齢で早熟蚕を作りカイコの幼虫期間を短縮して、カイコの発育を早めた場合、有核精子束や無核精子束の出現時期にどのような影響が及ぶのかについて調査した。 その結果、有核精子束の出現時期は、対照区とほぼ同じか若干早まる程度であった。精母細胞が有核精子束に変化するまでには一定の日数を要することが明らかになった。無核精子束の出現は、アラタ体摘出の時期が早くなるほど早くなったので、アラタ体から分泌されるJHが無核精子束の出現(即ち有核精子形成から無核精子形成への切り替え)を何らかの方法で抑制している可能性が考えられる。対照区はもちろん、どの摘出区でも、無核精子束の出現日と30KDaタンパク質の出現日の差は7日であるので、おそらく30KDaタンパク質は、有核精子形成から無核精子形成への切り換えのコミットメント(apyrene spermatogenesis commitment)にも関与しているに違いないと推察される。 本研究で明らかになった結果は、この精子二型の現象を解明していく上で貴重な知見を提供するものである。
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