研究課題/領域番号 |
06454068
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
相薗 泰生 神戸大学, 農学部, 教授 (20089931)
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研究分担者 |
角田 素行 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (50127164)
竹田 真木生 神戸大学, 農学部, 助教授 (20171647)
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キーワード | 前胸腺刺激ホルモン(PTTH) / 脳-側心体-アラタ体 / PTTH分泌調節 / 神経伝達物質 / 蛋白質燐酸化 / 休眠覚醒 / Bombyx mori / Antheraea pernyi |
研究概要 |
家蚕の幼虫5令期(3日目明期)の安定な脳-側心体-アラタ体複合器官を用いて、既に明らかにした「アセチルコリン→→PTTH-神経分泌細胞→PTTH分泌」に関わるシグナル伝達系の詳細を検討し、新たに以下の結果を得た。i)PTTH-及びムスカリン性アセチルコリン受容体(Subtype M_1)-特異抗体を用いた免疫組織化学染色より、PTTH-脳神経分泌細胞にM_1受容体が発現されていることと、PTTH分泌がM_1受容体特異的アンタゴニストにより阻害されることを見出し、PTTH分泌促進が、アセチルコリンによるPTTH-神経分泌細胞内の直接刺激によることを実証した。ii)アセチルコリンにより、PTTH-神経分泌細胞に誘起されるシグナル伝達:Muscarnic acetylcholine receptor → GTP binding protein → Phospholipase C → IP_3+Diacylglycerol → Ca^<2+>-CaMkinase+Proteinkinase C のうち、両酵素が共役して蛋白質を燐酸化することが必須であること、iii)この際、Ca^<2+>-CaMkinaseによって脳部に位置するPTTH-神経分泌細胞の32kDとアラタ体に位置するPTTH-神経分泌細胞軸索末端の21kDの蛋白質が、また、Proteinkinase C によって同じ軸索末端の25kD蛋白質が特異的に燐酸化されることを確認した。なお、燐酸化される蛋白質の生理的役割については、研究を継続中である。 他方、さく蚕(野蚕)休眠蛹の光周性依存覚醒[長日処置(L18:D6)による覚醒]に関して次の新知見を得た。i)体液中へ2回のPTTH分泌(6〜10日目,17〜22日目)と1回のエクダイゾン分泌(20〜22日目)を経て、30〜32日で覚醒成虫化した。この間、ii)脳内でドーパミンとノルエピネフィリンの量は20〜25日にピークを示し、セロトニン量は15〜25日にわたり漸時増大した。iii)しかし、PTTH分泌器官である脳-側心体-アラタ体複合器官は、20〜22日にセロトニンにだけ応答してPTTHを分泌する能力を発現した。これらのことから、セロトニンが、休眠蛹の覚醒を誘導する内分泌カスケード(PTTH分泌 → エクダイソン分泌)のPTTH分泌を調節するものと推定した。
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