イネの穂を構成する窒素の半分以上は、老化組織からの転流に由来する。この窒素転流の過程では、老化葉身で分解されたタンパク質などからグルタミンを合成し、師管を介して若い組織に輸送後、生合成反応で再利用される一連の反応が起こる。本年度は、老化組織でグルタミンの合成を行っていると考えられる細胞質型グルタミン合成酵素(GS1)の維管束組織内の細胞分布と、若い組織でグルタミンの再利用を直接行うと考えられるNADHグルタミン酸合成酵素(GOGAT)遺伝子のゲノムクローンの獲得と構造解析を行った。 1。第11葉展開中のイネを供試して、各葉位におけるGS1タンパク質の維管束内分布を免疫組織学的に解析した。最も老化が進んでいる第6葉身では、GS1は伴細胞と維管束柔細胞に検出された。伴細胞は、師管に隣接しミトコンドリアを多く含む細胞で、物質の師管への送り出しを行っている細胞である。GS1が伴細胞に存在したことで、窒素転流への関わりが更に深まる結果を得た。また、葉位が上がり、若くなるにつれて伴細胞でのシグナルは薄くなり、未抽出葉身では伴細胞には全くGS1は検出できず、厚壁組織にシグナルが観察された。なお、GS1タンパク質は、活性を有する機能タンパク質であることを確認した。 2。イネ幼植物地上部からゲノムDNAを調製し、ゲノムライブラリーを構築した。このライブラリーを用いて、イネNADH-GOGATcDNA断片とアルファルファのcDNA断片をプローブとして、NADH-GOGATのゲノミッククローンを7つ得た。その内の2つはコード領域の全長とプロモーター領域を含むものと考えられ、制限酵素地図を作成後、現在塩基配列の決定を行っている。
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