(1)A-factor特異的レセプターの解析-A-ファクターは菌体内に存在する特異的レセプターと結合し、二次代謝と形態分化に関与する遺伝子群の発現調節を行っていることがこれまでに明らかになっている。このA-ファクターに特異的に結合するレセプター蛋白質を、^3HラベルしたA-ファクターとの結合を指標として完全精製し、N末端と内部のアミノ酸配列を決定し、この配列を基に遺伝子のクローニングに成功した。 (2)形態形成調節遺伝子amfRの転写調節因子の解析-amfRはS.griseusのA-ファクター欠損株に気中菌糸形成を回復させる遺伝子の1つとして同定された遺伝子である。amfRを含む転写単位のプロモーターはA-ファクターの非存在下で活性が高く、存在下で低いことが明らかであり、プロモーター領域中のDNA断片をプローブに用いたゲルシフトアッセイにより、この領域に特異的に結合するA-ファクター非存在下にのみ検出される蛋白質を同定し、最終的にSDS-PAGE上で2本のバンドを与えた。これらの蛋白のN末端配列は同一の配列を示すことから、精製された蛋白は1種類であると判断された。 (3)S.griseusのafsK遺伝子の取得と解析-AfsK蛋白はS.coelicolorの二次代謝をグローバルに制御する蛋白AfsRに対する真核生物型のSer-Thrキナーゼであるが、このafsK遺伝子を含むプラスミドをS.griseusのA-ファクター欠損株に導入すると胞子形成の回復が観察されることから、この菌の形態形成制御にAfsKが関与していることが予想され、この菌からのafsK遺伝子の取得並びにその解析を行った。afsK破壊株は胞子形成の効率が、特にショ糖による高浸透圧下において顕著に低下していた。E.coliを宿主に用いてAfsK蛋白の大量発現を行い、精製AfsK蛋白を取得、in vitroリン酸化実験により、AfsK蛋白の自己リン酸化を確認した。 (4)A-ファクター合成遺伝子afsAの転写調節因子の取得-A-ファクター欠損株におけるA-ファクター合成遺伝子afsAのプロモーター活性が野生株に比べ低下していることから、その調節に関与する遺伝子がafsAを含む欠失領域に存在していることが示唆され、afsA遺伝子の周辺領域の塩基配列の決定を行った結果、afsAの上流にバクテリアに広く分布する転写調節蛋白群と相同な蛋白をコードする遺伝子が見いだされた。
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