ゼニゴケの雌培養細胞のYACライブラリーを作製することを試み、50〜750kbのインサートを持つYACクローンを23個得た。約50kb約500kbの2種類のクローンをプローブに用いたFISHに成功した。しかし、YACのクローニングの効率が低いこと、そのままではシ-クエスができないことなどから、P1由来人工染色体(PAC)にベクターを変えてライブラリーを作製することにした。PACライブラリーの材料には雌雄の葉状体を用いた。現在までに50〜250kbのインサートを持つクローンを約5000個得ている。約50kbのインサートを持つPACクローンをプローブに用いたFISHでシグナルが得られ、残りのクローンの中から性染色体由来のクローンが存在する可能性が示唆された。 雌雄のゲノムの違いを検出するために、雌雄葉状体のゲノムDNAを鋳型にしてRAPD-PCRを行い得られたDNA断片の塩基配列を決定したところ、Ca^<2+>依存性タンパク質リン酸化酵素 (CDPK)と相同性のある遺伝子が見つかった。雌培養細胞のゲノムにおいてCDPKの全塩基配列を決定したところ、6番目のエキソン(6A、6B)が重複して存在しており、これらをalternative splicingによって使い分けていると予想された。そこで、雌雄培養細胞、葉状体、生殖器官より抽出したmRNAを用いて、エキソン5と7の間をRT-PCRにより増幅してその塩基配列を決定した。すると、いずれの器官においてもエキソン6Aのみを持つmRNAと、エキソン6Bのみを持つmRNAが作られていることが確認され、実際にalternative splicingがおこなわれていることが明らかになった。 雌性生殖器官と葉状体とのcDNAサブトラクションにより3種類の新規な遺伝子の断片が得られているほか、RNA fingerprintingによって多数の生殖器官特異的なcDNA断片を得た。
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