本研究は、脳・および神経系の栄養現象におけるインスリン様成長因子-I(IGF-I)の意義を、いくつかの側面から明らかにしようとするものである。研究は2つの側面に大別され、第1は、脳・神経系はどのような様式で栄養素を取り込んでいるのか、であり、第2は、組織・器官の栄養現象に神経系はいかに関与しているかで、それぞれに対するIGF-Iの関与を明らかにしようとした。 本研究では、まず、脳においてIGF-I遺伝子がどの部位に多く発現しているかを解析した。また、その発現におよぼすタンパク質の栄養条件の影響を調べた。タンパク質栄養の条件としては、無タンパク質食と小麦グルテンを含む食餌を給与した。また、IGFの活性発現に重要な調節機能を有していると考えられているIGF結合タンパク質(IGFBP、現在までに6種類が知られている)についても、解析を行った。 IGF-IのmRNAは、脳各部位で広く発現していたが、大脳、中脳、小脳等で発現が少なく、逆に、間脳、嗅球、下垂体等で多く発現していた。タンパク質栄養条件の影響は、顕著には認められなかった。一方、IGF-IIのmRNAは、脳の各部位にほぼ同じ水準で検出された。食餌条件の影響は、やはり明確ではなかったが、中脳の部分では、タンパク質栄養条件が悪化した場合に、mRNAの量が減少する傾向が認められた。 IGFBPについては、IGFBP-1およびIGFBP-3のmRNAは、脳のいずれの部位にも検出されなかったが、IGFBP-2のmRNAは脳の各部位にほぼ同水準で検出された。栄養条件の影響はIGFBP-2の場合も、極めて少なかったが、やはり中脳で栄養条件の悪化に伴って減少する傾向が認められた。 その他、神経切断による、骨格筋の代謝変動についても解析を進めた。
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