本研究は、感染初期における諸素過程に焦点を絞り、材線虫病抵抗性がどの素過程の違いに由来するのかを明らかにすると同時に、各素過程で宿主と線虫との間にどのような物質的相互作用があるかを明らかにすることを目的としている。こうした観点から、昨年度は、感受性樹種と抵抗性樹種間に見られる、組織への線虫の侵入に対する抵抗性の違いが、個々の細胞の抵抗性の違いに由来することを明らかにした。本年度はその続きとして、抵抗性機構のうち、同種内の抵抗性の差異の機構を検討した。その結果、以下の成果が得られた。 (1)強病原性S6-1の感受性および抵抗性アカマツ苗木への接種実験により、抵抗性アカマツにおいても初期の線虫移動は行われているが、増殖は抑制されることを明らかにした。現在、抵抗制アカモツの試料をHPLCにより分析しつつあり、安息香酸やテルペン類など、線虫の活動を抑制する物質が、抵抗性において果たしている役割を検討中である。(2)野外で行ったアカマツへの接種試験によって、弱病原性材線虫を前接種することにより強病原性材線虫による枯死率が低下する、いわゆる誘導抵抗性現象が確認された。 線虫の活動に影響を及びす物質に関する実験が手間取っている他は、ほぼ、当初の研究計画通り進展している。特に、誘導抵抗性現象が確認された点は、今後、材線虫抵抗性樹種の抵抗性機構を解明する上で、新たなアプローチを切り開くものとして期待できる。なお、現在、材線虫病防御物質あるいはファイトアレキシン、更には、線虫の動きと増殖を促進する物質の検索を継続している。
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