本年度は3つの木材穿孔性昆虫グループについて、主として以下のような知見が得られた。 キバチ:スギから羽化したオナガキバチに対する線虫感染状況を調査し、線虫がキバチ個体群に及ぼす影響を検討した。この結果、線虫感染によりオナガキバチは、卵の縮小や機能破壊はみられなかったものの、脱出時期が遅れ、成虫体サイズが小型化する傾向が認められ、次世代生産に何らかの影響を及ぼすことが示唆された。 カミキリムシ:スギカミキリ幼虫のスギ生立木および伐倒時期の異なる丸太に接種実験を行い、幼虫の発育経過と死亡要因を、材の栄養条件、水分条件、樹木の抵抗性(樹脂分泌)に関連づけて考察した。生立木では樹脂の分泌が、また伐倒後経過時間の長い丸太では栄養条件と含水率の低下が繁殖成功度に影響したことが示唆された(投稿準備中)。 キクイムシ:カラマツに穿孔するカラマツヤツバキクイムシの生育過程とそれによって伝播される青変菌の菌相の変化を、野外実験と分離実験により明らかにした(内容の一部投稿中)。これに関して、キクイムシが持ち込む数種の菌に対する樹木側の反応を経時的に明らかにするための接種実験の準備も進めている。また、7種のアンブロシアキクイムシとそれぞれの共生菌との組み合わせによる人工飼育実験を行い、各キクイムシによる他種キクイムシの共生菌の潜在的な利用可能性を検討した(解析中)。
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