研究課題/領域番号 |
06454094
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
奥山 剛 名古屋大学, 農学部, 教授 (00023482)
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研究分担者 |
吉田 正人 名古屋大学, 農学部, 助手 (30242845)
山本 浩之 名古屋大学, 農学部, 助教授 (50210555)
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キーワード | 樹木 / 成長 / 膨圧 / 水分ポテンシャル / 水分負圧 / 成長応力 / 接線ひずみ / しおれ点 |
研究概要 |
樹木の成長応力の発生機構に関係する二次成長のひきがねとなる生細胞の膨圧の日変動を樹幹に貼付したストレインゲージによって内樹皮のひずみ変動から推定する方法を確立し、生細胞の成長を動的に連続的にとらえることを目的に実験的研究を行った。 1、環境制御を行わない条件下での生育では、樹幹は14時頃最大収縮を示し、午後から夜にかけて緩やかな伸長をする。夜明け前に最大の膨張を示し、日照が開始されると同時に急激な収縮を示す日周期を持つ。光を人工的に制御した人工気象室内での測定から、この接線ひずみは光照射に対応することが明らかとなった。 2、さらに、接線ひずみの動きは、葉の水分ポテンシャルの実測値と高い相関があることを明らかにした。 3、光照射中に最大の収縮を示す時点で、シュートおよび葉を切断すると当時に、接線ひずみは急激に伸長に向かうこと。水ストレスに対応して接線ひずみは収縮すること。枯死過程の測定では、土壌のしおれ点である水ポテンシャルが-1.5MPa以下になった場合には、水の再供給によっても接線ひずみは回復しなくなる。また、接線ひずみが収縮する段階は2段階あることが解った。すなわち、原形質分離がおこると思われる時点まで収縮したひずみは、いったんおちつき、さらに乾燥させたら乾燥による収縮が現れる。 4、これらのことから、接線ひずみは、葉の蒸散による水ポテンシャルの低下と根からの吸水による樹幹の水分負圧と、新生細胞の水分負圧の差によって生じた新生細胞内の膨圧による新生細胞壁の伸長と収縮により発現することが明らかとなった。 5、以上から、新生細胞内の膨圧の絶対値は約0.3〜0.4MPa程度であり、これが光照射によって16〜88KPaの日変動を示していると推定された。 以上から、樹木の膨圧および水ポテンシャルが連続的に測定されることが明確になった。今後、樹木の細胞壁の形成と物質沈着過程をこの力学的作用と関連させて理解することがその物性発現過程を明らかにするために重要であり研究を続行する予定である。
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