研究概要 |
魚類由来の培養細胞は,魚類生理や魚病ウイルス研究の材料としてだけでなくバイオテクノロジー,細胞工学などの分野で,今後更にその重要性そして将来的有用性を発揮すると予想されるが,既に哺乳動物の細胞培養技術を安易に転用,または依存して事足りる段階は終了し,魚類細胞の特性,特異性を充分理解した上で,新たな培養法を開発していく事が急務となっている。そこで本研究では,今後,水産応用研究の基礎となる実用的な改良型細胞培養法,(1)細胞の浮遊培養(2)無血清培養(3)細胞外マトリックスを用いた培養法,が現在抱えている問題点を克服すること,同時に具体的成果として,魚類細胞の培養技術の確立と改善することを目的とした。 上記(1)-(3)について平成6年度は以下のような結果及び実績を得た。 1)従来申請者が開発して来た連続浮遊培養法に加え,6年度は,CHSE-sp細胞を用い間欠攪拌浮遊培養法,更に静置浮遊培養法の可能な細胞系統を選抜した。この株化細胞は,これまで報告されている魚類由来株化細胞には例のない新しいタイプの細胞系統であり,つまり,その培養において専用の培養容器を必要とせず,汎用撥水性容器,例えばプラスチック試験管等,でも静置浮遊状態で培養可能であり,用時ミキシング・ピッペティング等で容易に単離分散細胞をあたえる培養系である。今後,各種バイオアッセイ等の素材として,また生理活性物質生産における高密度培養に適する細胞として期待される細胞である。 2)細胞の増殖効率を迅速に評価できる方法としてMTT法をCHSE-sp細胞について検討評価した結果,有効であることが明らかになった。 3)コラーゲン基質を評価する上で必要な,完全に細胞接着を拒否するシャーレの調整は,合成高分子試薬で皮膜することにより可能であることを明らかにした。
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