本研究の目的は、水産研究の基礎となる実用的な改良型細胞培養法、1:細胞の浮遊培養、2:無血清培養、3:細胞外マトリックスについて現在抱えている課題・問題点を克服することにあり同時に魚類細胞の培養技術の確立と改善発展を目的とした。 その結果(1)魚類細胞の浮遊培養:魚類細胞において唯一の完全浮遊培養適合マスノスケ細胞CHSE-spの利用と魚類細胞の特性・低温耐性の兼用により、低温状態で単離分散状態のまま長期保存可能なCHSE-ss細胞の樹立に成功した。つまり缶詰瓶詰型の培養細胞の開発に成功した。本細胞は汎用冷蔵庫等で保存でき、用時プレート等に注ぐだけで細胞は即接着伸展を開始しアッセイに使用可能な状態を提供し、煩雑な継代保存等の操作をいっさい必要としない。細胞性状は類縁細胞と異なるもののウイルス感受性等有用性状に変化がない。(2)無血清培養:魚類細胞で初めての連続継代可能な完全無血清培養系細胞CHSE-nsの樹立に成功した。本細胞は培養上清に増殖促進、接着促進物質を分泌する。(3)細胞外マトリックス:陸上動物I型コラーゲン上におけるCHSE-sp細胞の接着拒否の問題は熱変性により解消できること、またその接着機構には-RGD-配列が関与している事を明らかにした。真皮I型コラーゲンは、由来動物に依存しCHSE-spの細胞接着親和性の違い、として現れる事が明らかになった。 以上のことから、CHSE-ss細胞は各種バイオアッセイ(環境汚染物質、病原ウイルス等の検出)に、CHSE-ns細胞は魚類特異的増殖因子の検索等において同時に自己分泌するサイトカインにおいて、コラーゲン問題では困難を究めているある種の魚類初代細胞の培養法に有用であると考えられる。
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