養殖ウシエビの体色の発現には外骨格中の色素とともに、筋肉上皮の色素が大きく寄与することが観察された。そこで、筋肉上皮中に存在するカロテノプロテインをコラゲナーゼ処理により抽出し、その諸性状を検討した。このカロテノプロテインは濃青色を呈し、分子量はゲルろ過により21.4kDaと算定された。また、SDS-PAGEでは22.9kDaの単一のバンドのみが見られた。構成カロテノイドとしては遊離型アスタキサンチンのみを含んでいた。次に体色が暗灰色および青色を呈するエビの筋肉上皮につき、コラゲナーゼ処理により抽出されるカロテノプロテインと残存するカロテノイドの含量・組成を比較した。カロテノプロテイン画分は主として遊離型アスタキサンチンを含み、その含量は暗灰色および青色の試験群間で大差なく、いずれも濃い青色を呈した。一方、青色カロテノプロテインを除いた後の筋肉上皮は、両試験群ともコラゲナーゼ処理前に着色の認められた部分が赤色を呈したが、当初、暗灰色であった試験群でその色調が濃厚であった。対応して、残留カロテノイドの主成分と同定されたアスタキサンチンエステルは、暗灰色群で青色群の約6倍多く含まれていた。このことから養殖ウシエビの暗灰色の体色は、カロテノプロテインの青色とアスタキサンチンエステルの赤色の重ね合わせにより発現することが示唆され、養殖ウシエビに見られる体色の多様性はは、異なる色素によるものではなく、共通の青色カロテノプロテイン画分および赤色カロテノイド画分の存在比の相違によって生ずることが明らかになった。
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