平成6年度に開発した茎熱収支法による植物流量センサーを用いて、熱帯果樹の果柄およびセスバニアの根の水移動の特徴を調べた。前者の実験では、マンゴ-とチェリモヤを材料とし、果実果柄に微小な流量センサーを装着し水移動の日変化を測定した。その結果、何れの材料も日中には果実から樹体への向かう水の流れ、すなわち、水の逆流現象が観察された。 後者の実験では、真中を仕切った容器中央にセスバニアを裁植し、左右の根を露出させて、流量センサーを装着し、水流量を測定した。流量の測定開始以降、容器片側の根圏層の灌水を中止し乾土側とし、他方を湿土側とした。乾土側では、土壌が乾燥するにつれて根の水吸収量が減少するのが明瞭に認められた。乾燥が一層進むと夕刻から早朝にかけて水が逆流する現象が認められた。この逆流現象に対応し、夜間における乾土側の土壌水分は、横ばいか若干の増加傾向を示した。しかし、この逆流が生ずる土壌水分の限界値は今回の実験では明らかにできなかった。また、容積含水率の低下につれて、日射量に対する根の水吸収量の比が直線的に減少する傾向が、乾土側及び湿度側共に認められた。 今回の研究で得られた、植物体内の水の流れに通常とは異なる逆流現象が生じるという知見は、果樹においては果実の甘みや実割れなどの品質に影響する現象として、セスバニアにおいては干害を軽減するために植物が備えている機能として注目される。
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