研究概要 |
前年まで得られた結果を解析するとともに,その結果に基づいて,セスバニアを材料に追加実験をおこなった.中央を仕切った箱にセスバニアを植え根を両側に伸長させて,一方の側を潅水し,他方の側を無潅水として,乾燥側と湿潤側を設けた.それぞれの側から太い根を選び水流量センサーを取りつけ,水の流れを継続測定した.測定は7月3日〜14日まで(実験1)と,8月17日〜9月15日まで(実験2)の2回行った.何れの実験でも,乾燥側の土壌水分の低下につれて,乾燥側の根の水吸収量が減少し,実験1では土壌の水ポテンシャルが-0.51MPaのとき,実験2では-0.05MPaのときに,逆流現象が認められた.一方,湿潤側の根の流量は,乾燥側の根の水吸収量の減少を補完するように増加傾向を示した.乾燥が更に進み,土壌の水ポテンシャルが-1.5MPaに達したとき,水吸収の日量はほぼ0となった。乾燥処理期間が短い実験1では再潅水後乾燥側の根の水吸収量は回復したが、それが長い実験2では完全な回復が認められなかった。乾燥側の根の水ポテンシャルは-0.70〜-1.1MPaと湿潤側の根(-0.69〜-0.73MPa)よりも低い値を示した.乾燥処理前と処理後の根の乾物量を推定したところ,乾燥側では増加が小さかったが,湿潤側では2〜3倍増加したことが示唆された.なお,乾燥処理のかわりに塩処理を試みたが明瞭な結果が得られなかった. 以上の結果,根圏層に乾燥域と湿潤域が存在する場合,湿潤域の水は乾燥域に流れ,水ストレスを軽減することが明らかとなった.この場合,湿潤域の根は乾燥側の根の機能低下を補うように機能が高まることがわかった.3年間にわたる研究から,作物は水補償作用を有し,この機能を発揮させる技術が確立すれば,生物機能を利用した水の有効利用も可能であると結論された.これについては今後の研究開発が期待される.
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