反芻家畜の生産性(泌乳量や増体量)に及ぼす下垂体成長ホルモン(GH)の効果に関する研究が注目されている。しかし、反芻家畜では採食に伴ってGH分泌抑制が起こることが報告されており、申請者らはこの機構に反芻動物の主要なエネルギー源であるVFAの血液及び第一胃内の濃度増加が関与している可能性を報告している。本研究の目的は、反芻家畜にのみ特異的に見られるVFAによるGH分泌抑制機構を反芻家畜の下垂体細胞を用いて解明することである。 本年度は、1)GH分泌細胞の大量採取法および培養法の確立、2)パッチクランプシステムのセットアップ、を目的とした。 1)ヤギ(ザ-ネン種)から摘出した下垂体前葉部をコラゲナーゼ処理し、種々の分泌細胞からなる単離細胞標本を作成した。この方法の改善を検討し、従来の約三倍の前葉細胞を採取することに成功した。次に、GH分泌細胞を10%FCSを含むDMEMで3日間CO_2インキュベータ-で培養し、種々の刺激因子に対して充分に分泌反応を起こしうる細胞標本の作製に成功した。この培養細胞は、GRF刺激に対して、約4倍のGH分泌を起こし、VFA投与によってGH分泌は有意に抑制された。VFAの中では、酪酸による抑制効果が最も強かった。 2)パッチクランプシステムのセットアップは、現在進行中であり、来年度から稼働しうるまでになっている。
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