ヤギ下垂体前葉細胞を用いて以下の結果を得た。 1.潅流した細胞単離直後の細胞をCRFやGHRPによって刺激した時のGH放出増加反応は、VFA(酢酸、プロピオン酸および酪酸、10mM)の潅流液への投与によって完全に抑制された。このVFAの抑制効果は、3日間培養した細胞でも確認された。 2. GRF刺激によって開くヤギ・ソマトトロフの主なカルシウム・チャネルは、膜電位依存性のL型カルシウム・チャネルであることが示された。 3. VFAの膜電位依存性カルシウム・チャネルに及ぼす効果を、ホールセル・クランプ法を用いて電気生理学的に解明した結果、以下のような結果を得た。1)細胞内電位を5mVずつステップ状に脱分極し、細胞内電位を約-20mV前後にすると、急激に内向きに電流が増大し、続いて、外向き電流が増大した。2)内向き電流は、ナトリウム・チャネルの抑制薬であるTetrodotoxinの投与で影響を受けなかったが、カルシウム・チャネルの抑制薬であるNifedipineの投与で完全に消失した。この結果から、内向き電流は、カルシウム・イオンの細胞内への流入によって起こることが示された。3)酪酸の添加は、Nifedipine投与の場合と同様に、内向き電流を完全に抑制した。この抑制効果は、オレイン酸の投与でも認められた。 以上の結果から、VFAはGRF刺激によるGH放出増加を抑制すること、その細胞内機序として、VFAがソマトトロフの膜電位依存性L型カルシウム・チャネル活動を選択的に抑制する結果、GRF刺激時の細胞内カルシウム・イオン濃度増加が抑制される可能性が考えられること、が示された。
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