研究課題/領域番号 |
06454112
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 仙吉 東京大学, 農学部, 助教授 (80114487)
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研究分担者 |
河本 馨 東京大学, 農学部, 教授 (30011894)
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キーワード | プロラクチン / プロラクチンレセプター / RT-PCR / 競合的RT-PCR / 遺伝子発現 / 乳腺 / 泌乳開始 / 泌乳の維持 |
研究概要 |
プロラクチンレセプター(以下PRL-R)は分子量約8万の糖たんぱく質で、泌乳開始のシグナル、また、泌乳中の乳腺細胞においてミルクの合成を調節する。PRL-Rを正確に測定する必要がある。著者らが開発した「競合的RT-PCR」は特定の遺伝子発現をメッセージャンRNA(以下mRNA)のレベルで正確に測定する方法である。この方法をPRL-RmRNAの測定に適用し、マウスを用いて以下の点を明らかにした。 (1)泌乳開始は分娩に伴って起こる。PRL-R遺伝子が何時の時点で発現するのか不明である。本研究の結果、PRL-RmRNAは分娩が起こる約時間10時間前から始まり、約6時間前に最高のレベルに達する。以後泌乳を継続しても徐々に減少するから、分娩前に起こるPRL-RmRNAの一過性の増加が泌乳開始のシグナルであると結論した。 (2)泌乳の継続とPRLL-RmRNAとの関係、および、PRL-RmRNAを調節する因子を明らかにした。泌乳中に乳子を隔離する離乳9時間から12時間の間で約90%のPRL-RmRNAが消失する。一方、離乳24時間後に乳子を同居させると6時間で最初のレベルにまで回復した。活発な合成と分解によりPRL-RmRNAレベルは保たれている事を明らかにした。乳腺のミルク貯留量は離乳12時間後が最大である。哺乳により乳腺から急速に減少する。ミルクによる乳腺内圧の上昇と減少がPRL-RmRNAレベルに影響を与える。オキシトシン投与、部分的なミルクの除去などによる乳腺内圧力の変化と平行してPRL-RmRNAレベルが変化した。ミルクの貯留による乳腺内圧の上昇がPRL-R遺伝子発現を低下すると結論した。 本研究により、泌乳開始および維持に係るPRL-Rの役割を解明し、PRL-Rは遺伝子発現のレベルで調節を受けている。
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