本研究では、第一に飼料蛋白質含量の変化に伴う肝臓及び筋肉の蛋白質合成速度の変化に対して、転写段階及び翻訳段階での調節がどの程度関与しているのか調査した。組織蛋白質合成率は、トリチウムが標識したアミノ酸の組織への取り込みの程度から求めた。組織中の総mRNA含量は、グアニジン-酸-フェノール法を用いてRNAを抽出した後、ポリ(U)セファロース4Bアフィニティークロマトグラフィーを用いてポリ(A)鎖を含む総mRNAを抽出し、吸光度260nmにて含量を測定した。肝臓の蛋白質合成率は、飼料蛋白質含量が0%から20%まで増加するのに伴って上昇し、飼料蛋白質含量が20%から60%まで増加するのに伴って緩やかに減少した。この蛋白質合成率の変化は、肝臓中のRNA含量の変化、単位RNA当たりの蛋白質合成量の変化及び蛋白質合成の直後の鋳型となる肝臓中のmRNA量の変化によって説明された。筋肉の蛋白質合成率は、飼料蛋白質含量が0%から20%まで増加するのに伴って上昇し、飼料蛋白質含量が20%から60%まで増加するのに伴って緩やかに減少した。この蛋白質合成率の変化は、筋肉における単位RNA当たりの蛋白質合成量の変化及びmRNA量の変化によって説明された。即ち、飼料蛋白質含量の変化に伴う肝臓及び筋肉の蛋白質合成速度の変化は、転写段階及び翻訳段階の両段階において制御されていることが示された。 第二に、絶食後の動物に飼料を再給餌した時の蛋白質合成速度の急激な上昇が、どの栄養素により引き起こされているのか明らかにするために、絶食後の家禽に蛋白質、炭水化物あるいは脂肪を摂取させ、30分後に筋肉の蛋白質合成率を測定した。絶食により低下した筋肉蛋白質合成率は、どの栄養素を給与した場合も同様に、絶食前の水準まで回復し、この上昇は単位RNA当たりの蛋白質合成量の増加のみによって説明された。 以上の結果については、現在Journal of Nutritionに投稿中である。
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