まず、屠畜場で黒毛和種去勢牛および黒毛和種雌牛から得た血清について、マウス由来3T3-L1脂肪前駆細胞を用いて脂肪細胞分化誘導活性のバイオアッセイを行ったところ、血清中の脂肪細胞分化誘導活性とドナーの脂肪交雑との間には有意な相関が認められたが、皮下脂肪厚および枝肉重量は分化誘導活性との間に有意な相関を示さなかった。このことから、血中の因子が少なくとも部分的に脂肪交雑の形成に影響を及ぼしていることが示唆された。また脂肪細胞分化誘導活性は去勢牛よりも雌牛で有意に高いことが認められたが、出荷元の相違による脂肪細胞分化誘導活性の差も著しく大きかった。さらに、血清中レチノール濃度と分化誘導活性との間にも負の相関が認められた。これは、脂肪細胞の分化がレチノイドによって抑制されるとする多くの報告と一致する。血清中の総コレステロール・トリアシルグリセロール・遊離脂肪酸の各濃度は、脂肪細胞分化誘導活性とは有意な相関を示さなかった。一方、枝肉共進会に出品された交雑種肥育牛から採取した血清についてのバイオアッセイでは、黒毛和種の混合と異なり、分化誘導活性と脂肪交雑との間に有意な相関は認められなかった。ホルスタイン種去勢牛において、脂肪細胞分化誘導活性は肥育が進むにつれて上昇する傾向が認められた。 同様のバイオアッセイを、ウシ脂肪組織由来の脂肪前駆細胞プライマリ-カルチャーを用いて行うことも試みた。脂肪組織採取時と考えられる微生物の混入のため、当初は培養が出来なかったが、適切な抗生物質・抗菌剤の選択および添加濃度・期間を明らかにでき、現在このウシ脂肪前駆細胞プライマリ-カルチャーを用いたバイオアッセイを行っている。
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