まず肥育牛血清中の脂肪細胞分化誘導活性のバイオアッセイに必要な分化誘導剤の再検討を行った。デキサメタゾン、IBMX、インスリンは単独ではほとんど脂肪細胞への分化を誘導しなかったが、デキサメタゾンとIBMXを併用することにより十分な分化が観察された。 めん羊を用いて、血清中の脂肪細胞分化誘導活性が給餌およぴ絶食により変動するか検討した。給餌直後から数時間で一次的に分化誘導活性が低下し、その後数時間で回復する傾向が認められた。絶食による影響は、個体によって変動パターンが異なり、明確にならなかった。 肥育牛血清中の脂肪細胞分化誘導因子が血清の解凍と再凍結により影響を受けるか検討したところ、解凍・再凍結を2回繰り返すと脂肪細胞分化誘導活性が上昇することが観察された。 肥育牛の血清を限外ろ過により5つに分画し、それぞれの分画を分化誘導時の培地に添加して脂肪細胞の分化に及ぼす影響を検討した。100kDのフィルターで阻止された分画は分化を強力に抑制した。またこの分画は他の分画よりも増殖期の脂肪前駆細胞の増殖を促進した。また脂肪細胞分化誘導活性の低い血清は、100kDのフィルターで阻止された分画の分化抑制効果が強かった。したがって、血清の脂肪細胞分化誘導活性にはこの分画中に存在する分化抑制物質が大きく寄与していることが示唆された。 肥育牛血清中の脂肪細胞分化誘導活性のバイオアッセイを、ウシ脂肪組織由来の脂肪前駆細胞の初代培養を用いて行った。マウスの脂肪前駆細胞株を脂肪細胞へ分化させるためにはウシ胎児血清中の成分が必要であることが報告されているが、ウシ脂肪前駆細胞の初代培養においては、血清を添加することなしに分化が観察され、血清の添加はむしろ分化を抑制することが示された。
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