屠畜場で得た肥育牛血清について、3T3-L1脂肪前駆細胞を用いて脂肪細胞分化誘導活性を測定したところ、ドナーの脂肪交雑との間に有意な相関が認められた。このことから、血中の物質が少なくとも部分的に脂肪交雑の形成に影響を及ぼしていることが示唆された。血清中レチノール濃度と分化誘導活性との間には負の相関が認められた。これは、脂肪細胞の分化がレチノイドによって抑制されるとする多くの報告と一致する。血清中の総コレステロール・トリアシルグリセロール・遊離脂肪酸の各濃度は、分化誘導活性とは有意な相関を示さなかった。めん羊において、給餌直後から数時間で一時的に血清中の脂肪細胞分化誘導活性が低下し、その後数時間で回復する傾向が認められた。絶食による影響は、変動パターンに固体差が認められた。2.肥育牛血清中の脂肪細胞分化誘導活性を、ウシ脂肪組織由来の脂肪前駆細胞の初代培養を用いて測定することを試みたが、マウスの脂肪前駆細胞株と異なり、血清の添加が分化を強力に抑制したため、信頼できる数値データが得られなかった。3.肥育牛血清中の脂肪細胞分化誘導活性を測定するための適切な分化誘導剤を再検討した。デキサメタゾンとイソブチルメチルキサンチンを併用することにより十分な分化が観察された。4.肥育牛血清に対して解凍・再凍結を2回繰り返すと脂肪細胞分化誘導活性が上昇することが観察された。肥育牛の血清を限外ろ過により5つに分画し、それぞれの分画の脂肪細胞分化誘導活性を比較したところ、100kDのフィルターで阻止された分画は分化を強力に抑制した。また脂肪細胞分化誘導活性の低い血清は、100kDのフィルターで阻止された分画の分化抑制効果が強かった。したがって、血清の脂肪細胞分化誘導活性にはこの分画中に存在する分化抑制物質が大きく寄与していることが示唆された。
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