研究概要 |
我々は黒毛和種の有効利用を図るため,肉質の優れている但馬牛の集団を対象に,種々の集団遺伝学的分析を加えてきた。その分析にDNA多型マーカーを取り込む事は今後の育種にとって不可欠である。本研究では黒毛和種を対象として,ミニサテライトやミクロサテライト遺伝子座等のシングルローカスVNTRマーカー遺伝子座のクローニングを行い,形質選抜のマーカーとして利用出来るものを検索しようとした。マーカーと形質との連鎖が明らかになれば,ポジショナル・クローニング法によって直接形質にかかわる遺伝子を究明する手がかりが得られる。平成6年と7年の2年度にわたりミニサテライトとミクロサテライト両種の遺伝子座のクローニングを行った。ミニサテライトのクローニングではウシゲノムライブラリーからミニサテライト反復配列33.15をプローブとしてスクリーニングを行った。その結果,20個のポジティブ・クローンを得た。その中には極めて多型性の高い反復配列が数個発見された。一方、マイクロサテライトのクローニングではミュータゲネシスの変法を用いて黒毛和種のゲノムライブラリーから(GT)nの反復配列のクローニングを行った。その結果,81個のポジティブ・クローンを得,そのいずれもが(GT)nの反復配列を持つ遺伝子座であることが確認された。また、(GGAT)nの4塩基の反復配列クローンも20個クローニングされ、その塩基配列の決定を行った。平成8年度は両年度に引き続きミクロサテライト,ミニサテライトの両遺伝子座のクローニングと塩基配列の決定の作業を行なった。特にミニサテライト遺伝子座に関しては、3塩基反復配列の(GTG)nを新たに分析対象に加えてクローニングを行った。その結果(GTG)nに関しては1個ではあるが極めて有望な遺伝子座がクローニングされた。その遺伝子座での多型性は平均ヘテロ接合度が87%に達し、しかも、その多型がアガ ロース・ゲル電気泳動で簡易に識別できるなどの特徴を備えている。
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