研究概要 |
我々は黒毛和種の有効利用を図るため,肉質の優れている但馬牛の集団を対象に,種々の集団遺伝学的分析を加えてきた。その分析にDNA多型マーカーを取り込む事は今後の育種にとって不可欠である。そこで、本研究では黒毛和種を対象として,ミニサテライトやミクロサテライト遺伝子座等のシングルローカスVNTRマーカー遺伝子座のクローニングを行い,形質選抜のDNAマーカーの検索を行った。マーカーと形質との連鎖が明らかになれば、連鎖関係を利用して優良形質の選抜や形質を支配する遺伝子座を究明出来る。平成6年から平成8年の3年度にわたりミニサテライトとマイクロサテライト遺伝子座のクローニングを行った。ミニサテライトのクローニングではウシゲノムライブラリーからポジティブ・クローンを得た。その内、数個の多型性の高い遺伝子座に注目して、PCR分析が可能なプライマーを設計中である。一方、マイクロサテライトのクローニングでは黒毛和種のゲノムライブラリーから(GT)nの反復配列を持つのポジティブ・クローンが多数得られた。しかしながら、そのPCR産物の分析は技術的に困難を伴うため、3塩基以上の反復配列のクローニングを試みた。(GGAT)nの4塩基の反復配列では20個のクローンの塩基配列を決めた。その結果、それらは(GGAT)nの配列を含んではいるものの、完全な反復配列は発見されず、また、それらの遺伝子座における多型は顕著ではなかった。そこで、3塩基反復配列の(GTG)nを新たに分析対象に加えてクローニングを行った。その結果(GTG)nに関しては1個ではあるが極めて有望な遺伝子座がクローニングされた。その遺伝子座での多型性は平均ヘテロ接合度が87%に達し、しかも、その多型がアガロース・ゲル電気泳動で簡易に識別できるなどの特徴を備えていた。以上、本研究の結果、PCR法とアガロース・ゲル電気泳動で識別できる多型性の高い遺伝子座が数個発見された。それらについては、近々、学術誌に報告する予定である。
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