研究概要 |
24頭(雄10,雌14)の黒毛和種人工哺乳子牛の舌遊び行動を宮崎大学農学部付属住吉牧場(S牧場),宮崎県畜産試験場(T牧場)および東北大学農学部附属農場(K牧場)で調査した(各牧場N=8)。すべての供試牛を2日齢で母牛から分離・単飼し,42日齢まで人工哺乳した。12週齢まで人工乳を不断給餌し,その後配合飼料を体重のおよそ1-2%給与した。舌遊びおよび模擬舌遊び行動(常同行動)の出現量より,各牧場ごとになるべく同数になるように多発群および少発群に分類し,各群の行動・生理的特徴を調査した。舌遊び多発群では探査行動が多く,横臥時間が短いことが認められた。他の維持行動、社会行動に関しては差は認められなかった。新奇環境(オープンフィールド)に導入すると、常同行動多発個体は少発個体に比べて探査行動が有意に多かった。また新奇環境内に設置したポールを倒した個数体は多発群に多かった。さらに,オープンフィールドに入るまでの時間が短い傾向にあった。多発群の平均心拍数は前半4分間は少発牛より高い傾向,その後少発牛よりも低く推移する傾向にあった。天井から金属バケツを落とすという驚愕刺激に対しては、行動差は認められなかったが、オープンフィールド移動直後1分間の心拍数は多発群で高い傾向にあった。驚愕刺激提示直前(5秒前)に対する刺激提示直後(5秒後)の心拍数増加率は,多発群で有意に高くなった。これらの特徴から舌遊び行動多発個体は,活動的で環境に積極的に働きかける性格がうかがえた。また驚愕刺激提示直後の心拍数増加率も,多発個体の方が有意に高くなったことから、多発個体は交感神経系の反応性が高いものと考えられ、交感神経系の反応性が高いという生理的基盤が積極的性格を形成している可能性も示唆された。そして,舌遊び行動とはその積極的個体が種々の行動を抑制(吸乳,摂食など)された場合に出現・助長する行動である可能性が示唆された。
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