これまでの研究成果を要約すると、(1)本菌には強毒株(マウスLD_<50>=10^6)と無毒株(LD_<50>>10^8)が存在する、(2)強毒株は菌体表層に15-17kDa抗原を発現する、(3)強毒株は15-17kDa抗原遺伝子をコードした病原性プラスミドを保有する、(4)強毒株は仔馬に本症を再現するが、病原性プラスミドの脱落により弱毒化する、(5)自然感染仔馬の病変部からは強毒株のみが分離される、(6)病原性プラスミドはDNA分子が類似した85kbと90kbの2種類が存在する、(7)これら毒力マーカーを用いた疫学調査から本症発生牧場の馬飼育環境は強毒株に汚染されている、(8)毒力関連抗原遺伝子の塩基配列が決定され、強毒株の迅速同定法としてPCR法が開発された、(9)仔馬の実験感染モデルを確立し、強毒株の最小感染量を10^4と決定した。さらに15-17kDa抗原は、(10)菌体表層に発現し、(11)培養温度と、(12)培養pHに発現調節され、(13)マクロファージ内で抗原が発現され、(14)免疫組織学的手法で感染仔馬もこの抗原を宿主体内で認識すること、などを明らかにした。さらに、(15)マウス感染モデルにおいても病原性プラスミドが感染に必要不可欠な病原因子であること、(16)強毒株の生菌免疫(致死量以下)は再感染(致死量の数倍)に対して感染防御するが、強毒株死菌及び弱毒株生菌免疫は強毒株の攻撃を防御しない、(17)胸腺欠損ヌードマウスでは少量の強毒株が持続的に感染し、免疫血清を移入しても強毒株の増殖は阻めないが、免疫脾臓細胞の移入は強毒株を体内から排除する、(18)強毒株感染マウスの主要臓器(肝臓、脾臓、肺)からの菌の排除にはIFN-γとTNF-αが動員される、(19)一方、弱毒株感染マウスのクリアランスにはこれらのサイトカイン応答を必要としない、(20)抗IFN-γ及びTNF-αモノクローナル抗体を投与したマウスでは致死量以下の強毒株でも感染が増悪・致死すること、などを細菌学、免疫学並びに病理学的手法を用いて明らかにした。
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