卵巣除去(OVX)ラットあるいOVXを施し皮下にエストロジェンを慢性投与したラットの弓状核-正中隆起領域あるいは正中隆起組織片からの興奮性アミノ酸による黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)放出が一酸化窒素(NO)により媒介されているかどうかを検討した。NO合成酵素(NOS)の阻害剤であるN^G-monomethyl-L-arginineあるいはNO吸収剤であるヘモグロビンを添加した培養液中にてそれぞれの組織片を培養し、興奮性アミノ酸によるLHRH放出効果が阻害されるかどうかを観察した結果、エストロジェン処理ラットの弓状核-正中隆起組織片からのLHRHがNOS阻害剤により抑制された。一方、OVX処置のみのラットからの弓状核-正中隆起組織片からのLHRH放出は興奮性アミノ酸により促進されず、また正中隆起組織片のみからのLHRH放出はエストロジェン処理の有無にかかわらず興奮性アミノ酸により促進されたがその放出はNOS合成阻害剤により影響を受けなかった。以上の結果から、エストロジェンが弓状核にあるエストロジェンレセプターを介し興奮性アミノ酸によるLHRH放出を促進すること、およびこのエストロジェンによるLHRH放出機構にNOが関与していることが示唆された。過去の報告では、NOの正中隆起からのLHRH放出への関与が仮定されていたが、本実験結果によりNOの作用部位は弓状核であり、正中隆起ではないことが明らかとなった。
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