研究概要 |
ウシにおける脂肪蓄積の遺伝的制御機構を分子遺伝学及び統計遺伝学の両面から解析することを目的として研究を進めた。分子遺伝学的アプローチとして脂肪細胞分化の制御因子C/EBPファミリー遺伝子の単離と脂質合成に関わる遺伝子の発現制御配列の解析を行った。わが国の主要な肉牛である黒毛和種血液よりゲノムDNAを調製し、λファージベクター上にウシ遺伝子ライブラリーを作製した。このライブラリーをマウスC/EBP遺伝子をプローブに用いてスクリーニングして、ウシC/EBPα,β,δの3種の遺伝子を単離し、その塩基配列を決定した。これらの遺伝子はマウスのものと高い相同性を示し、ウシにおいてもC/EBPファミリーが脂肪細胞に重要なはたらきをしていると考えられた。また脂質合成に関わる遺伝子として脂肪酸結合タンパク質422とリポプロテインリパーゼ遺伝子を単離し、これらの第一エクソン及びその上流のプロモーター領域の塩基配列を決定した。422遺伝子のプロモーター領域には、転写制御因子AP-1とC/EBPαの認識配列がみられ、この遺伝子の発現がC/EBPαにより直接制御されると考えられた。 また統計遺伝学的アプローチとして、肥育牛のフィールド記録を用いて、屠肉性形質に関与している主働遺伝子の存在について、Famulaの方法により検討した。その結果、主働遺伝子がこれらの形質に関与している可能性は低いことが示唆された。しかし、この方法は父母と子の双方の記録が存在する場合に用いられており、父母の記録が得られない屠肉性形質にこの方法を応用した例は他にはなく、この点についてはさらに検討が必要であると考えられる。
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