ウシにおける脂肪蓄積の遺伝的制御機構を明らかにすることを目的として研究を進めた。肥満の原因遺伝子の1つであり、体脂肪量とエネルギー代謝の調節を行うホルモン(レプチン)をコードするobese(ob)遺伝子をウシゲノムライブラリーよりクローニングした。次に、このウシob遺伝子の配列を基にRT-PCRIによりウシob cDNAをクローニングした。これらの塩基配列の解析からウシob遺伝子もマウスやヒトと同様に3つのエクソンで構成されることが示唆された。しかしこれらのクローンはいずれも第1エクソンを含んでいなかったため、5′RACE法によりウシob cDNAの5′末端領域のクローニングを行った。その結果5′末端に31bpの新規の配列が得られ、これがウシob遺伝子の第1エクソンの配列であると考えられた。 また、昨年クローニングした脂肪細胞分化の制御因子ウシPPARγ2の発現制御機構を解析するために、ウシPPARγ遺伝子を含むBACクローンを入手し、その解析を行った。ウシPPARγ2 cDNAをプローブとしたサザンブロット解析により、γ2の第1エクソンを含む2.8kbの領域が同定された。今後その塩基配列の決定が必要である。さらに、プロモーターとスプライシングの違いにより作られる5′末端領域の配列のみが異なるアイソフォームPPARγ1を5′RACE法によりクローニングした。その結果ウシのγ1ではスプライシングのパターンがマウスの場合と異なることが明らかとなり、その制御機構が異なる可能性が示唆された。
|