1週齢のSPF子豚の両側の耳腔へ経鼓膜的に、尿道カテーテルを用いて、Mycoplasma hyorhinis(以下ではMhrと略記する)8.7×10^8CFU/mlを0.2ml宛投与した。実験1では培養液を、実験2ではPBSを希釈液として用いた。対照には希釈液のみを投与した豚及び無処置豚を置いた。投与後0、7及び14日後に各群1-2頭を剖検し、病理学的(組織、免疫組織及び超微形態)並びに微生物学的(マイコプラズマ及び細菌培養)を行った。 実験1ではMhr接種7及び14日後の豚全例に耳管炎が発生し、14日後には化膿性中耳炎を併発した。拭い液の培養では、Mhrが耳腔で増殖していることが確認された。また、免疫組織並びに超微形態学的検索により、Mhr感染と耳管炎の関連を証明することが出来た。対照豚には異常はなかった。 実験2では使用した子豚の一般状態が悪く、対照豚の耳腔からも少数の雑菌が分離され、軽度の耳管炎を伴っていた。しかし、Mhr接種豚では中耳炎のみならず、化膿性中耳炎を表しており、耳腔から大量の接種菌株が回収された。 以上の結果より以下の結論を得た。 1.Mhrは豚の中耳炎の一次病原体となりうる。 2."Mhr感染により耳管粘膜の線毛運動が障害され、上部気道常在細菌が中耳腔に侵入し、化膿性中耳炎が発生する"という従来の我々の仮説の正しさが部分的に証明された。 3.虚弱子豚の中には中耳腔で細菌が増殖している個体がある。このような例では、Mhr感染が細菌の病原性を増強する可能性がある。
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