研究概要 |
ウシ小型ピロプラズマ病の生ワクチンの開発を目標として、種々の方法でタイレリア原虫の弱毒化を試みた。まず、タイレリア原虫寄生赤血球を摘脾したウシに接種する方法で10代継代することにより、ある程度弱毒化した原虫が得られた。さらに弱毒化を進めるため、この原虫株を、ウシ赤血球を移入したSClDマウス(Bo-RBC-SClDマウス)で20代継代した。しかし、この継代中、SClDマウス内でのタイレリア原虫の増殖性に顕著な変化は見られず、また、ウシへ接種実験においても、SClDマウス継代によりさらに弱毒化が進んだという証拠は得られなかった。次に、タイレリア原虫寄生ウシ赤血球にX線照射を加えながらBo-RBC-SClDマウスで繰り返す方法で、さらに弱毒化しかつダニ体内での原虫増殖能に障害を持つ原虫株を作製することを試みた。種々の線量でX線照射した原虫寄生ウシ赤血球をBo-RBC-SClDマウスに静脈内接種し末梢血中への寄生赤血球の出現を調べることにより、タイレリア原虫に対する致死線量は30,000から40,000Radの間にあることが判明した。そこで、原虫寄生ウシ赤血球に30,000RadのX線照射を加えながらBo-RBC-SClDマウスで継代を繰り返えし、3代めの原虫感染Bo-RBC-SClDマウスにフタトゲチマダニの幼ダニを吸血・胞血落下させた。脱皮後の若ダニについて唾液腺のメチルピロニン染色を行ったところ、唾液腺胞へのスポロゾイトの出現は認められず、ダニ体内での原虫増殖能に障害を持つ原虫株が得られた可能性が示唆された。今後さらに、この若ダニのウシへの原虫媒介試験を行う予定である。
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