研究概要 |
ウイルスに感染した動物細胞にはインターフェロンが生成し、ウイルス増殖を抑制する。インターフェロンは2,5-oligoadenylate(2,5-A)synthetaseとprotein kinaseを活性化する。抗ウイルス機構の1つとして2,5-Aにより活性化されたendoribonuclease(RNase L)がウイルスRNAを不活化することが考えられている。 本研究ではヒト由来の2,5-A synthetase(2,5-AS)cDNAをAgrobacterium介在によりタバコ(Nicotiana tobacum cv.Samsun NN)に形質転換した。カルスより個体を誘導(Ro世代)し、タバコモザイクウイルス(TMV)とキュウリモザイクウイルス(CMV)に対する抵抗性を調べた。 0.1μg/ml TMV接種において病斑数は、非形質転換体(control)に比べ、10〜40%減少した。CMV普遍系1μg/mlを接種した場合、全身病徴のモザイク症は軽減した。強毒系のCMV黄斑系1μg/mlを接種した場合、強いモザイク症の発現が 1〜2日controlに比べ遅れた。この場合は特に病徴の軽減は認められなかった。 以上のように2,5-AS cDNAによる形質転換タバコにおいて、程度に差はあるがTMVおよびCMVに対する抵抗性が認められた。またRoから採取した種子から得た個体(R_1)においても同様の結果を得た。この形質転換体よりmRNAを抽出し、2,5-AS cDNAをプローブとしてノザンハイブリダイゼーションを試みると明らかに陽性反応が認められ、2,5-ASmRNAの発現が検出された。しかし2,5-ASの存在およびその活性については未だ確認されていない。今後は形質転換体における2,5-ASの活性を調べると共に、抗ウイルス性発現の機構を検討し、さらにその性質を高める方策についても考えて行きたい。
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