研究概要 |
ウイルスに感染した動物細胞にはインターフェロンが生成し、2,5-oligoadeny late(2,5-A)synthetaseとprotein kinaseを活性化してウイルス増殖を抑制する。抗ウシイス機構の1つとして2,5-Aにより活性化されたendoribonuclease(RNase L)がウイルスRNAを不活化することが考えられている。 本研究ではインターフェロンによって動物細胞に誘導される2,5A synthetase(2,5-AS)およびprotein kinaseのcDNAをagrobacterium介在によりタバコ(Nicotiana tabacum cv.Samaun NN)に形質転換し、タバコモザイクウイルス(TMV)とキュウリ モザイクウイルス(CMV)に対するR_1世代の抵抗性を調べた。 2,5-AS形質転換体では0.1μg/ml TMV接種において病斑数は、非形質転換体(control)に比べ、10〜40%減少した。CMV普遍系1μg/mlを接種した場合、前進病徴のモザイク症は軽減した。強毒系のCMV黄斑系1μg/mlを接種した場合、強いモザイク症の発現が1〜2日controlに比べ遅れた。マウス由来の2,5-AS形質転換体ではウイルス増殖阻害率90%でヒト由来の場合の75%に比べ高い抵抗性が認められた。protein kinase形質転換体ではT MVおよびCMVに対する増殖阻害率は60〜70%であり、ウイルス抵抗性は認められたが、2,5-AS形質転換体に比べると劣っていた。 以上のようにインターフェロンにより動物細胞に誘導される2,5-ASおよびprotein kinaseのcDNAにより形質転換したタバコはいずれも植物のRNAウイルスに対し抵抗性を示したが、それは後者に比べ前者で強かった。今後はこれらの形質転換体におけるウイルス抵抗性の機構を明らかにして行くとともに、両遺伝子を同時に導入した形質転換体を作出し、その抗ウイルス性を検討するつもりである。
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