多細胞動物の個体発生では、その出発点となる卵に多量のリボ核タンパク質が存在し、受精後の速やかなタンパク質合成支えると考えられている。リボ核タンパク質の中にはdsRNAと会合するタンパク質が存在すると考えられるが、このことを実証した研究は皆無である。われわれは、イトマキヒトデ卵母細胞に、かかるタンパク質の探索を行い、新しいdsRNA結合性リン酸化タンパク質を得た。得られたmRNAについてcDNAを得、その塩基配列を決定したところ、ヒト核小体リン酸化タンパク質B23と23%の、アフリカツメガエル核小体タンパク質NO38と33.7%のホモロジーを示す配列が得られた。B23やNO38にはRNA結合領域は知られていない。また、pp50をコードするmRNAの存在を調べるために、得られたcDNAの上流約820bpの配列をプローブとして、ノザンブロットを行った。その結果、pp50のmRNAは産卵期約2カ月前の卵巣には存在するが、成熟した卵母細胞には存在しないことが判明した。また、原腸胚、精巣、生体幽門もうのうにはpp50のmRNAは見いだされなかった。したがって、pp50は若い卵母細胞で生成し、卵および初期胚の細胞核に存在するdsRNA結合性リン酸化タンパク質であると結論された。この結果からB23と同様、pp50も増殖の盛んな時期に存在するリン酸化タンパク質であると考えられる。
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